2017年2月2日 「主婦のパートに新たな106万円の壁!」

 平成28年10月から実施される、社会保険の制度改正により、主婦の働き方が大きく変わる可能性があります。
夫が会社員や公務員の妻(第3号被保険者*)の場合、今まで年収130万円を超えると、年金や健康保険の保険料を自分で払わなければならなくなり、給与総額は増えるものの控除される金額が多くなるので、かえって手取り金額が下がることが起こりえることから、「130万円の壁」と言われてきました。しかし、平成28年10月からその壁に106万円の壁が追加されます。今まで、130万円を超えないように働いていた奥様にとっては、気になる話ですね。但し、対象となるパートタイムの条件があり、全員が対象ではありません。詳しく見ていきましょう。
*第3号被保険者:会社員や公務員によって扶養されている配偶者。実質の保険料負担をしていないが国民年金の被保険者であることが特徴。

 

◆平成28年10月施行の社会保険適用条件とは
 平成28年10月から以下の4項目を全て満たすと、これまで社会保険に加入していなかったパートの方でも、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することになります。

  1. 勤務時間が週20時間以上
  2. 1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
  3. 勤務期間が1年以上見込み
  4. 勤務先が従業員501人以上の企業
    (但し、学生は対象外)

週20時間、106万円と第3号被保険者の関係を図で表すと、以下のようになります。(黄色の部分が今回の対象)
(厚生労働省ホームページの資料をベースに筆者が加筆)

 今回の改正で、黄色の部分の人は第2号被保険者となります。つまり、パートタイムで働いている第3号被保険者の主婦は、週20時間以上の勤務で、1ヶ月の賃金が8.8万円を超えると、年金や健康保険の保険料を自分で支払う必要が出てきます。では、第3号被保険者のままでいるためには、「いつから働く時間を抑えるの?」という疑問が出てきますね。

 

◆年収106万円の壁とは?
 図でもわかるように、週20時間未満に抑えて働く場合は、今まで通り130万円を超えなければ問題ありません。週20時間を超えても、第3号被保険者のままでいるためには、106万円(月8.8万円)の赤い線を超えないように働く必要があります。
 ここでややこしいのが、標準報酬月額は交通費、ボーナス、残業代等が含まれますが、今回の改定では、社会保険の加入要件は「交通費やボーナス、残業代、臨時に支払われる賃金を除いた月収が、8.8万円を超えなければ良い」となっていることです。今まで130万円を上限に働いていた主婦は、9月の給与明細で額面が8.8万円以上でも安心してください。たまたまその月に多く働いたからと言っても、すぐに翌月から社会保険の被保険者になるわけではありません。繰り返しになりますが、継続して週20時間以上働く予定の方だけが、106万円(月8.8万円)の壁を、意識する必要があるということです。ただ、最初に申し上げた全ての要件を満たすということも必要ですので、早とちりしないようにしてください。

 

◆これからの自分らしい働き方を考える
 106万円の壁は、今後対象を順次拡大し、最終的にパート全員が対象となるようです。これにより、106万円を超えて働く場合、夫が会社員や公務員の妻の手取り年収(税・社会保険料控除後)は減りますが、一方で将来受取る年金収入は増えることになります。
さらに、昨年末の税制大綱で「配偶者控除」の改正が行われ、女性は時間や年収の上限を気にせず、働ける環境に変わりつつあります。 制度改正のマイナス面だけにとらわれず、自分らしい働き方を模索するのも、良いのではないでしょうか。

 

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)理事 植田周司 (CFP®)  

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2016年11月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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