2018年5月2日 空き家問題で困っていませんか

 

空き家問題は大きな社会問題となっています
 
親が亡くなり、その後空き家のままになっている。」「近所に空き家があり火事など心配だ。」このような問題で悩んでいる方が大勢います。現在、国内に空き家が820万戸あるといわれていますが、空き家をそのまま放置し続けると、建物の損傷・倒壊、不審者の侵入、害虫の発生等により、防災面、保安面、衛生面の問題があるほか、景観も損なわれ、周辺の生活環境が悪化します。

 

◆「空き家対策特別措置法」が制定されました
 国は、空き家問題を解消するため、平成27年5月に「空き家対策特別措置法」を完全施行しました。この法律により、市などの行政は、地域の空き家に対して、助言または指導や勧告等を行っており、なおも改善されない場合は、その空き家は「特定空家」に指定され、固定資産税が大幅にアップします。そして、更にその状態が継続した場合は、最終的には、代執行(注)により建物が取り壊されます。
(注)代執行とは、法律または法律によって命じられた行為で、義務者が履行しない場合に行政庁みずから義務者のなすべき行為をなし、必要な費用を義務者から徴収するもの。


◆空き家住宅の対策を考えましょう 
1. 空き家の所有者を確定する
 建物の所有者が亡くなったにもかかわらず、相続登記がされておらず、永年の間、所有者が故人のままになっているケースが全国的に多発しています。時間が経てば経つほど、その手続きが複雑になり、大変な手間と時間がかかることとなりますので、そのような場合は一刻も早く所有者を確定し、相続登記を済ませことが先決です。なお、国は空き家対策の一環として、相続登記の義務化について法制化の具体的な検討を進めています。

 

2. 売却するか活用するか決める
(1)売却する場合
建物を取り壊して売却するか、建物付きで売却するかを検討します。後述するように空き家の取壊し費用を補助している自治体もあります。
(2)活用する場合 
 次のような方法が考えられます。
①相続人自らが居住する
 相続した人がアパート暮らしをしていた場合は、リフォームするか建替えた上で、自ら居住することもできます。
②賃貸する
 リフォームして賃貸するか、アパートとして建て替えるかを検討します。いずれにしても賃貸の需要があるかどうかが重要なポイントで、収支計画をしっかり立てることが大切です。

③更地にして駐車場にする
 近くにショッピングセンターや公共施設など、人の集まる施設がある場合は、駐車場として時間貸しのニーズが期待できるかもしれません。ただ、通常の住宅を取壊した後の土地では、それほど多くの台数を収容する広さはなく、採算もよいとは言えないので、本格的な有効活用をするまでのつなぎ程度の位置づけとなるでしょう。
④民泊として活用する
 外国人観光客の増加による宿泊施設の不足を補うため、「民泊」がクローズアップされており、平成30年6月に「住宅宿泊事業法」が施行されます。ただ、民泊については、騒音やゴミ問題など宿泊者のマナーが取りざたされており、管理・運営のほか、近隣とのトラブル防止の対策をとることが大切です。
⑤空き家バンクを利用して、買主、借主を見つける
 多くの自治体が開設しており、過疎化が進んでいる地方へのIターン、JターンやUターンを希望する人たちを対象に、売主と買主、貸主と借主のマッチングを行い、過疎地域への移住を促進させようというものです。

 

◆公的な支援制度があります
多くの自治体で、例えば次のような補助金(助成金)制度を実施しています。
①老朽建築物の建替え費用(200~300万円程度) (全国の多くの自治体)
②空き家の取壊し費用(数十万円)(同上)
③空き家跡地を公園などの行政目的に利用するための空き家除却費(200万円) (東京都文京区) 
④過疎地へUターンする人たちが定住住宅として活用するための修繕費(250万円)(島根県)

 

◆空き家に係る税制を活用しましょう
1. 居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除 
 一人で住んでいた一戸建ての家屋で、亡くなった後に空き家となっている住宅を、売却した場合、譲渡所得の3,000万円特別控除を適用することができ、譲渡にかかる所得税の節税となります。この制度の適用を受けるためには、昭和56年5月31日以前に建築された建物であること、平成31年12月31日までに売却することなどの要件があります。

 

2. 「小規模宅地の相続税評価額の特例」
 「小規模宅地の相続税評価額の特例」とは、配偶者や同居していた親族等が家を相続した場合、自宅の土地330㎡まで相続税の評価額が8割減になるという特例です。ただ、被相続人に配偶者などがおらず空き家になった場合で、相続人が相続前の3年間、本人または配偶者が所有する家屋に住んだことがなければ、その場合も、この特例が受けられます。いわゆる「家なき子」と呼ばれる制度です。ただ、近年、この特例を受けるため、実際には住み続けている家を、形式的に身内に贈与するなどして、税金逃れをする人が出てきたため、平成30年4月から適用が厳しくなりますので注意が必要です。
 
 空き家は時間が経てば経つほど解決しにくくなります。補助金制度や税制などを上手に利用すれば、経済的な負担を抑えて処理することができますので、早めに対策を検討するとよいでしょう。

      

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  水野 誠一 CFP(R) 

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 この内容は2018年1月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

 

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