2015年6月19日 気軽にできる相続対策のススメ


 平成27年税制改正は、これまでになく、相続対策を考えている方にとっては色々と活用できる制度となっています。平成27年1月から施行されている相続税の基礎控除の4割削減で、ごく普通のご家庭でも、相続人の数によっては相続税が課税されることが予想されます。これまで100人に4人程度しか課税されていない税金がもっと広い課税範囲となるのです。今回は子や孫への財産移転を考える人に、まさに今、とっておきたい相続対策をご紹介しましょう。


◆教育だけでなく結婚にも役立つ非課税制度

 既に施行されていた制度として、教育資金贈与信託制度があります。平成27年までといわれていた贈与期間が平成31年6月まで延長され、直系尊属からの贈与が1500万円までであれば非課税になるのです。塾や習い事であれば500万円までという制約はありますが、多額の金額を一度に贈与できるというメリットは大きいものです。

 また、教育資金以外にも、子どもや孫の結婚式場や披露宴の費用、新居の住宅費、新生児の保育料などの、結婚や出産費用に対して1000万までの贈与が非課税になる制度が新設されました。まさに相続対策を考える方にとっては、選び放題の制度が創設されました。


◆住宅取得資金の贈与の拡大

 教育や結婚費用を「見積もる」ということは難しいですが、非課税枠を最大限有効に圧要する手段として、住宅取得資金の贈与があります。ただ、10%への消費税増税が決まっていませんので、複雑な仕組みとなっています。非課税枠が二つとなっているのです。

非課税枠を精一杯活用する方は、消費税増税の改正の時期に注意しましょう。


贈与期間 

   非課税枠    

非課税枠

(良質な住宅家屋) 

平成271月~12 

1000万円 

1500万円 

平成281月~翌年9 

700万円 

1200万円 

平成2910月~翌9 

500万円 

1000万円 

平成3010月~翌6 

300万円 

800万円 

  

贈与を活用して住宅取得しようとする場合には、是非フラット35Sの利用も考えてみましょう。

(参照 http://www.flat35.com/loan/flat35s/ )

優遇策があります。フラット35Sにおける当初5年間(長期優良住宅、認定低炭素住宅等の特に優れた住宅について、当初10年間)の金利下げ幅が、現行の年▲0.3%から年▲0.6%に拡大しています。これは、2月9日に資金を受け取る方から適用し、平成28年1月29日までの申し込み分までが制度拡充の対象です。

 ただし、予算金額に達した場合には終了しますので、期限があると余裕を持っていても、早く終了する可能性があることにはご注意ください。


◆注意点を知った上で贈与する

 それぞれの非課税枠には上限があります。教育資金であれば1500万円、結婚資金であれば1000万円、住宅取得資金については消費税が10%になるかどうかで枠が異なります。ただ、教育資金と結婚費用については、余らないということが重要です。教育資金であれば30歳未満まで、結婚出産費用であれば50歳未満という年齢制限があります。余った場合には通常の贈与税が課税されます。

 教育費に関する考えや結婚に対する考えを擦り合わせておかないと、せっかくの非課税枠が無駄になります。使い道があらかじめ定まっているということは、ある意味で自由が効かないという点には注意が必要でしょう。


 もはや、自宅不動産と少々の預貯金を保有するというごく普通のご家庭でも、相続対策が全く不要とは言い切れない時代になっています。司法統計を見ると、家庭裁判所に遺産分割のための調停を申し立てているのは、ほとんどが5000万円までの資産を持つご家庭です。死後、家族に余計な争いを持ち込まないために、早いうちから若い世代に財産を移転することが相続対策だと言えるでしょう。

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)理事 當舎 緑 CFP(R)

KFSCは神奈川県民の皆様のライフプラン作りやより豊かな生活の実現に貢献することを目的に活動するベテランのファイナンシャル・プランナー集団です。

 

 この内容は2015年2月に相鉄不動産販売様のメルマガに掲載された内容を、同社のご了解を頂き掲載しています。

記載内容の一部は最新の情報を追加しています。

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