2023年11月15日 地主さんから借地の更新又は(底地)購入の打診があった場合、貴方はどのように考え、対応しますか?【事例紹介】

旧借地契約の更新が迫ったある日、地主さんから借地の更新又は(底地)購入の打診があった場合、貴方はどのように考え、対応しますか?参考としてある事例を紹介します。 

 

土地の借地権や底地の評価を把握していますか?

更新するにしても底地を購入するにしても更地価格(ほぼ公示価格と同じ)を知らなければ、地主さんとの交渉の場で対等に立つことは出来ません。また、更新に際し借地人が負担する費用(その後生じるであろう費用もあります)とその水準をご存知ですか?上記申入れがあった際にどのように考え、対応をすべきでしょうか?

 

 

交渉の前提として必要な借地権や底地の評価

借地権や底地の評価ですが、その原点である更地価格の算出。また契約を更新する場合の借地人が負担する費用をご説明します。

<更地価格(公示価格)の算出・・・更地価格と公示価格をほぼ同じ金額とします>

土地の価格は色々の算出方法がありますが、今回は、路線価を使用してある事例の公示価格を算出してみました。なお、路線価(国税庁が毎年7月に公表)は公示価格の約80 %に設定されていると言われております。

 

都内での具体的な事例でご説明します。

<都内のある土地 : 面積は100㎡、路線価:440C、奥行き価格補正率は1.00

■この土地の更地価格は以下により算出

 更地価格 : 440,000円/㎡ X 100㎡ =44,000,000円(路線価格)÷0.8=55,000,000円

■借地契約を更新した場合借地人が負担する各種費用

更新料・・・借地契約の更新に際し支払われる一時金。更地価格の3~5%程度が標準。

 更新料:55,000,00円X5%=2,750,000円

建替承諾料・・・新築の建物に建替える際に支払われる一時金。更地価格の3~5%が標準。

 建替え承諾料: 55,000,000円X5%=2,750,000 円

※以下2件の承諾料は、今回の事例で発生する可能性がないので金額の算出は省略します。

条件変更承諾料・・・借地契約の条件を借地人に有利とする場合、これを承諾する対価として支払われるもので、堅固の建物に変更する等が一般的で更地価格の10%程度が標準。

譲渡承諾料(名義書換料)・・・借地権の譲渡の際に支払われる一時金で、地主に対する借地権の譲渡承諾料であり、借地権価格の10%前後が標準。

  

借地権の賃料水準の妥当性

次に借地権の賃料水準の妥当性を検証すると共に地主が本来得るべき経済的利益と賃料差額を算出しました。また、売買する為に参考とする底地価格についても記載しました。

 

1.現在の賃料水準と賃料差額について

 旧借地法に基づく借地契約では、一般的に「地主が希望する地代」を受けとっていないことが大宗から*固定資産税等の4倍であり、平均的な水準(*固定資産税等の3~5倍が一般的水準)にありますが、地主から見ると本来得るべき利益(適正な地代)とは乖離しております。

上記に記載した借地の当該事例における借り得メリットを確認いたします。

更地価格:  440,000円/㎡ X 100㎡ =44,000,000円÷0.8=55,000,000円

現行地代:  30,000円/月 X 12ケ月=360,000円/年

宅地の経済価値に即応した適正な賃料

 55,000,000円(更地価格)X3%(期待利回り)+90,000円(固定資産税)=1,740,000円

 なお、本来利回りは最低5%程度を期待しますが、低金利下でもあり3%で算出

賃料差額(借地人の借り得):1年間の経済的利益

 1,740,000円  ー  360,000円(実際の支払の地代) =1,380,000円

 年間1,380,000円もの賃料差額(借地人の借り得)が生じております。

 

2.底地価格と借地権価格

当該土地の路線価は440C。これは440,000円/㎡でCは借地権割合が70%であります。

税務上の評価通達での評価割合を利用して借地権価格と底地価格を算出しました。

更地価格 55,000,000円X70%=38,500,000円(借地権価格)。

その差額である底地価格は16,500,000円ですが、この底地価格では、地主はまず売却には応じません。

 

今回の事例では、借地人はどのように考え対応したのでしょうか?

<借地人の判断と対応―底地を22,000,000円で購入する・・交渉の上同金額で決着>

①借地人、妻子共に今後ともこの土地・家で住み続けたい意向を持っている

今後20年間に亘り、現状でのコストを計算すると契約を更新した方がメリットはあるが、借地人も高齢となっており、本人死亡後、諸々で地主との交渉には不安があり、また今回の売買の機会を逃せば、生前での土地を所有する機会は難しいと判断した。

なお、購入金額は底地割合比10%高い40%であれば、これは長年安い賃料でお世話になったお礼と考えた

②底地購入資金も現金で用意できることから、資産価値55,000,000円の土地を所有でき、「小規模宅地の特例」を含め相続税の軽減もできると判断した。

③借地人死亡後、妻子が安心してこの家に住むことができ、家の建て替えや土地の売買も自由にできる点も大きなメリットと判断した。

 

★実際の事例を使いご説明しましたが、当該事例はあくまでも一事例であります。各々の借地契約の内容や借地人・地主との人間関係、家庭の事情等、その背景は異なっており、結論を導く方法も多種・多様にあります。本件を一つの参考として頂ければ幸甚です。なお、本件事例の金額等は実際の事例とは異なっております。

 

 -------------------------------------

 「 生活のお役立ち情報」 トップページ

 ------------------------------------- 

   

一般社団法人 かながわFP生活相談センター(KFSC)  沖島明博

専門分野: 

不動産、相続、金融資産運用 

 

主な資格: 

CFP®宅地建物取引士、相続アドバイザー

 

【免責事項】
 かながわFP生活相談センター(KFSC)は、当コラムの内容については掲載時点で万全を期しておりますが、正確性・有用性・確実性・安全性その他いかなる保証もいたしません。当コラム執筆後の法律改正等により、内容が法律と異なってしまう場合がございます。どうぞご了承くださいますようお願いいたします。万一、当コラムのご利用により何らかの損害が発生した場合も、当社団法人は何ら責任を負うものではありません。